腎臓は濾過と再吸収によって体の機能を一定に保つ役割を担っています。
老廃物や過剰に摂取しすぎた塩分や水分を排泄し、体液バランスを一定に保つ役割やその他にもホルモンの分泌によって造血の調整や血圧の調整をしたり、骨・ミネラル代謝、酸塩基平衡の調整を行ったりと、様々な機能を果たしています。そのため腎臓に障害を来すと全身に症状を生じる結果となるのです。
当院では高次医療機関と連携し、腎臓病の診断・治療、その後の進行予防や、透析期における腹膜透析など専門性の高い診療を患者さんと相談しながら提供いたします。
腎疾患の可能性を指摘された方、生活習慣病をお持ちの方、検尿の異常を指摘された方は気軽にご相談ください。
主な症状
このような症状やお悩みがある方はご相談ください
- 尿の中に血液が混ざっている、尿が泡立つ
- 頻尿や寝ている時に頻尿がある
- 腰周辺が痛い
- 体重が増えた
- 手足や顔が浮腫む
- 怠い、食欲ない
主な病気・疾患
- 慢性腎臓病
- 慢性腎臓病の患者数は約1300万人(成人の8人に1人)に上り、新たな国民病と言われています。発症・進行には生活習慣病が密接に関わっていたり、全身性の疾患が隠れていたりすることもあります。腎臓病は自覚症状に乏しいことも多く、いつの間にか腎不全に進行していることも少なくありません。末期腎不全に至り、腎代替療法を要するリスクが上がるだけではなく慢性腎臓病自体が心血管疾患や死亡の重大なリスクとなります。検尿異常や、腎機能障害の指摘をされた場合は精査をお勧めします。
- 急性腎不全
- 何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態です。腎臓には本来、血液中の老廃物や余分な水分を尿という形で体外に排泄するはたらきがあります。急にこれらの機能が低下すると、過剰な水分の蓄積や電解質※1の異常を招き、生命に危険を及ぼす重篤な状態になります。近年は手術や重症の感染症によって、全身の様々な臓器が障害を受ける多臓器不全の一部として発症することが多くなっています。
症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣(けいれん)などがあります。医療機関で採血した結果、急性腎不全と診断される場合もあります。原因は様々ですが、大きく3つに分類され (表1参照)、この分類は治療法にも深く関連しています。
- 腎臓結石
- 腎臓内で形成される固形物質であり、尿路結石としても知られます。結石が尿路を通過する際に痛みを引き起こすことがあります。当院では腹部CTの撮像により迅速な診断が可能です。
長径10 mm 以下の尿管結石の約2/3 は、症状発現後4 週以内に自然排石されるとされていますが、尿管結石の自然排石までの平均日数は、2 mm 以下で8.2 日、2〜4 mm で12.2 日、4 mm 以上で22.1 日とサイズと相関して長くなると報告されています。1 か月以上自然排石されない尿管結石については、腎機能障害や感染併発の危険を回避するために、積極的な結石除去治療の介入を考慮すべきであり、基幹病院の泌尿器科と連携し診療にあたります。
- 腎細胞がん
- 腎臓の細胞が悪性化し、がんを形成する疾患です。早期の段階では症状が現れにくく、進行すると腰の痛みや血尿などの症状が出ることがあります。リスクのある方で血尿を認めた場合は画像検査をお勧めさせていただきます
- 急性糸球体腎炎
- 腎臓の糸球体と呼ばれる構造の急性炎症です。糸球体は腎臓の機能的な単位であり、血液中の浸透圧や濾過を調節する重要な役割を果たしています。
急性糸球体腎炎は通常、先行する感染症(主に咽頭感染症や皮膚感染症)の後に免疫反応が過剰に働くことで発生します。感染症によって体内に侵入した抗原(細菌やウイルス)に対する免疫応答が過剰になり、免疫複合体と呼ばれる異常なタンパク質集合体が形成されます。これらの免疫複合体は糸球体に沈着し、炎症反応を引き起こします。
急性糸球体腎炎の症状には、血尿(尿中に血液が混じる)、蛋白尿(尿中に異常な量のタンパク質が排泄される)、浮腫(特に顔や足のむくみ)、高血圧などがあります。症状は通常、感染症の発症後1〜3週間程度で現れます。
- 慢性糸球体腎炎
- 前述した糸球体に何らかの原因による慢性炎症が生じる疾患です。
中でもIgA腎症は、世界で最も多い腎炎で、特に日本を含む東アジアに多いとされます。尿に血が混じったり、蛋白尿がでたりします。未治療の場合、約4割の方が腎臓の機能が悪化し、透析に至ってしまう予後不良の疾患で、本邦では「指定難病」の一つになっています。
しかし、その発症原因は未だ不明です。現在、診断には腎臓に針を刺す「腎生検」という検査が必須で、腎臓の「糸球体」という場所に、抗体の一種であるIgA(免疫グロブリンA)の沈着を確認することが必要です。最近の研究で、この沈着するIgAの一部に糖鎖修飾異常があり(糖鎖異常IgAといいます)、これが糸球体に沈着することで炎症が起こると考えられています。
患者さんの血液の中に、この糖鎖異常IgAが増えていることがわかっています。治療には、ACE阻害薬やアンギオテンシンII受容体拮抗薬といった降圧薬や、ステロイドを含む免疫抑制薬などが用いられています。本邦では、扁桃摘出術+ステロイドパルスとの併用療法(扁摘パルス療法)が良好な治療効果を示しています。
- ネフローゼ症候群
- 大量の蛋白が尿に漏れ出て、血液の蛋白濃度が低下し、むくみを伴う病気をネフローゼ症候群といいます。
ネフローゼ症候群の原因はさまざまであり、他の病気や疾患(例:免疫系の疾患、糖尿病、感染症、腎臓の炎症)に関連して発症することもあります。このうち最も多い病型の微小変化型ネフローゼ症候群の特徴として、若年者に多く、発症が急激ですが、副腎皮質ステロイド薬治療の反応が良好なことが挙げられます。
花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎などアレルギーのある方に比較的多くみられています。急にたくさんの蛋白が漏れ出るため、血管内は脱水になりやすく、腎臓の働きが急激に悪くなって、一時的に尿が出にくくなることがあります。通常、高用量の副腎皮質ステロイド薬治療により約2週間程度で蛋白尿は消失します。
腎臓の機能が低下して、末期腎不全に至ることは少ないですが、副腎皮質ステロイド薬を減量すると約半数近くに再発がみられます。再発を防止するために免疫抑制薬(シクロスポリン、ミゾリビン、シクロホスファミド)やリツキシマブ治療の併用が行われることがあります。
- 多発性囊胞腎
- 多発性嚢胞腎とは、両方の腎臓に嚢胞がたくさんできる病気です。
親から子へ遺伝する病気で、その遺伝のしかたで、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)にわけられます。ARPKDはおもに生まれた時に発症し、腎嚢胞の他に肝線維症を伴います。
ADPKDは年をとるとともに嚢胞が大きくなり、数も増え、腎臓の働きが悪くなってしまい、70才までに半数の方が末期腎不全になり、人工透析を必要とします。まだ若い時には自覚症状がないことが多いですが、嚢胞が大きくなるについて、背中の痛みや血尿、おなかまわりが太くなるなどの症状がでてくることがあります。高血圧を合併することが多く、きちんと治療することが必要です。脳動脈瘤も合併することが多く、定期的な検査がすすめられています。
最近になりADPKDの進行を抑えるための治療薬が使用できるようになりましたので、当院へ相談してください。